専門用語が通じないのは、決して相手のせいではない! 知識の呪縛 行動経済学(認知バイアス)

知識の呪縛とは




 
専門用語が通じないのは、決して相手のせいではありません。

ニュートンの実験で、机を叩いて曲名を当てさせると、叩く側は5割当たると予想し、実際の正答率はわずか2.5%でした。

知識の呪縛です。

頭の中で鳴っている曲は、相手にはただの雑音。

私の講義も、半分は雑音かもしれません。
 

知識の呪縛(Curse of Knowledge)とは、あることを知っている人が、「それを知らない人の立場」を想像することが難しくなる認知バイアスです。

たとえば、専門家が初心者に説明するとき、

「これくらいは分かるだろう」
「この言葉は常識だろう」
「ここまで説明しなくても伝わるだろう」

と思ってしまう現象です。

有名な例

よく紹介されるのが、Elizabeth Newtonの「タッピング実験」です。

参加者に「Happy Birthday」など有名な曲を頭の中で思い浮かべながら、机を指で叩いてリズムだけを相手に伝えてもらいました。

叩いている本人には、頭の中でメロディーが鳴っています。そのため、「相手にもかなり分かるはず」と感じます。

しかし、聞いている側に聞こえるのは、

トン・トン・トントン

という音だけです。

つまり、一度知ってしまうと、「知らなかったときの感覚」に戻るのが難しいのです。

ビジネスではよく起きます

たとえば営業担当者が、

「この商品はSaaSなので導入が簡単です」
「API連携できます」
「ROIが高いです」

と説明しても、お客さまがその言葉を理解しているとは限りません。

商品を毎日扱っている営業担当者にとっては当たり前でも、初めて聞くお客さまには分からない。

これも知識の呪縛です。

研修講師にも起きます。講師は同じ内容を何十回、何百回と話していますから、

「これは簡単な話」

と思ってしまいます。しかし、受講者にとっては人生で初めて聞く話かもしれません。

営業や伝え方で重要なのは

知識の呪縛を避けるには、単純に「詳しく説明する」だけではありません。

専門用語を日常語に置き換える。
具体例を入れる。
相手がどこまで知っているか確認する。
「初めて聞く人ならどう感じるか」を考える。

ことが重要です。

たとえば、

「損失回避があります」

より、

「人は1万円得する喜びより、1万円失う痛みのほうを強く感じる傾向があります」

と説明したほうが伝わります。

要するに、知識の呪縛とは、

「知っている人には、知らない人の気持ちが分かりにくくなる」

という現象です。

 

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組織の不正やコンプライアンス違反は、個人のモラルの問題だけで起こるわけではありません。権威への服従、損失回避、サンクコスト効果など、人間の判断のクセと組織の仕組みが重なることで起こります。

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